私たちは人工的なものに囲まれて生活をしています。その機能はわかっていても原料やメカニズムのわからないものが周りに溢れています。しかし、それらの緻密な人工物も、もともとはすべて自然の一部でした。人間が自然を改変し続けた結果、自然との間に埋めがたい溝が生じてしまったのです。
「自然のかなた」展は、私たちの原点・自然に焦点を当て、私たち自身の足元を見つめ直そうという趣旨から企画したものです。
この度紹介する気鋭の7名の作家たちは、現代に明敏な目を向け、自然を見つめ直しています。そうして生み出された作品には、さまざまな解釈による自然の姿が現れています。時には、自然と人口の境界線を取り払うような皮肉な造形が、時には、感情を排除した冷徹な眼差しで描かれた自然の姿が。これらの作品世界は、表面的な自然観や凝り固まった意識に揺さぶりをかけ、私たちがより広い視野で現実と向き合うことを可能にしてくれるはずです。
現代社会は、太古の自然が永い歴史を経て現れた姿です。「自然のかなた」とは、まさに変容した「自然」、現代社会の行く末をイメージした言葉です。さらにこの言葉は、出品作品のかなたに見える作家の信念をも暗示しています。
当館の自主企画による本展覧会にぜひ足を運び、現代美術家の真摯な仕事の成果をご覧ください。