洋画家・鴨居玲は、人間の孤独、不安、運命、そして生命とは何かを、厳しい眼差しで見つめ、鋭く問い続けました。その没後20年を迎えるにあたり、神戸市立小磯記念美術館では、「特別展 没後20年 鴨居玲展 ―私の話を聞いてくれ―」を開催します。
鴨居玲(1928-85)は、北國毎日新聞記者であった父親の赴任地・金沢(一説によると大阪)で生まれました。そして金沢、ソウルで小学校時代を過ごした後、大阪に移り、1940(昭和15)年、関西学院中学部に入学します。その後、再び金沢に転居し、戦後1946(昭和21)年には、金沢美術工芸専門学校に第一期生として入学、宮本三郎に師事し、才能を発揮しました。1952(昭和27)年の西宮への転居以降は、神戸やその近郊を拠点にし、田村孝之助が率いる六甲洋画研究所や神戸・ニ紀会などを中心に制作活動を行ないます。そして1969(昭和44)年、具象絵画の登竜門である安井賞を受賞、一躍、全国的な脚光を浴びます。
鴨居はしばしば、新天地を求めてパリ、南米、スペインなど海外に長期滞在しつつも、画家として歩み出してから1985(昭和60)年に急逝するまで、ほぼ一貫して国内では神戸を生活と創作の拠点にした画家でした。
本展は、石川県立美術館、当館、ひろしま美術館、長崎県美術館をまわる全国巡回展で、自己の内面を抉り出すように描かれた鴨居作品の、代表的な110点余を展覧し、その芸術世界の軌跡をたどります。鴨居芸術が我々の心に訴えかけるものは何なのか、皆様お一人お一人なりに答えを見出していただければ幸いです。