ファン・エイクの「ゲント祭壇画」を所蔵する聖バーフ大聖堂やかつての織物業の栄華を見せるレイエ川両岸のギルドハウスなど、いまだ中世の面影が色濃く残る町ゲント。ベルギーの首都ブリュッセルから西に鉄道で向かうこと40分、この町に、ベルギーで最も古くに創設された美術館のひとつがあります。そのゲント美術館は、現在、2006年のリニューアル・オープンに向けて改修中です。
本展覧会は、この改修工事によって実現するものですが、ジャック=ルイ・ダヴィッドやその弟子であるフランソワ=ジョゼフ・ナヴェなど新古典主義絵画にはじまり、エルンストやデルヴォーといった20世紀を代表するシュルレアリストの幻想的な作品にいたる125点によって綴られます。そこには、バルビゾン派の画家や写実主義的な視点、また印象派や新印象主義などフランスに生起する新しい美術の影響を受けるベルギー作家たち、そしてクノップフ、スピリアールトといった世紀末の象徴主義者たちの内的世界も見られます。
特に、西洋美術史の展開の上で欠くことのできないベルギーをみなさんに紹介しようと、本展の核は19世紀末から20世紀初めのベルギー近代美術に置かれています。国際的にも重要な役割を果たしたアンソールやナグリットの作品のほか、たとえば、ゲント生まれで、ゲント近郊のシント=マルテンス=ラーテム村で地方画派を生み出したファン・デ・ウーステイネや彫刻家ジョルジュ・ミンヌたちが独特な雰囲気の漂う世界に誘ってくれるでしょう。魅力的な芸術家たちを多く輩出しているベルギー美術の真髄を、どうぞお楽しみください。