東大寺の大仏殿は戦火で2度焼失し、現在の建物は宝永6年(1709)に完成したものです。鎌倉時代に再建された大仏殿がふたたび焼失したのは永禄10年(1567)のことで、大仏の頭部も溶けてしまいました。そののち両手や肩などは修復されますが、木製銅板貼りの仮の頭部を付けた大仏は、大仏殿がない状態で百年以上の歳月を過ごしました。その大仏を復興したのが公慶上人です。公慶上人は勧進帳を作って諸国を歩き、大仏復興を成し遂げました。続いて大仏殿の再建に着手しますが、その完成を見ることなく、宝永2年(1705)に58歳で亡くなりました。公慶上人が亡くなって今年で300年。大仏復興と大仏殿再建により、奈良は全国から大勢の参詣客を迎えるようになりました。現在のような観光都市奈良は公慶上人が基礎を築いたとも言えます。しかし公慶上人の名はほとんど知られていません。本展は、①大仏殿炎上、②公慶上人、③江戸時代の奈良、の三部構成で107件を展示するもので、公慶上人の生涯とその行実の全貌を明らかにする初めての展覧会です。