本展覧会は、同期間を会期として開催される「遣唐使と唐の美術」(奈良国立博物館、朝日新聞社等主催)にちなんで、特別陳列として開催するものです。
正倉院宝物は、我が国の奈良朝文化や唐代の美術工芸の粋を現代に伝え、シルクロードを経た国際交流を反映するものとして非常に重要な文化財です。その発祥地は遠く西アジアからインド、中国、朝鮮半島などアジア全域にわたり、シルクロードを経て長安に運ばれ、遣唐使によって日本にもたらされたものが多く含まれると考えられています。
様々な正倉院宝物にみられる高水準の技法は昔から関心を呼び、江戸時代から模造品が作られるようになったといいます。そして、明治時代になると本格的に公的な模造事業が始まり、現在までに数百点が製作され、正倉院事務所・東京国立博物館・奈良国立博物館が所蔵しています。今回展示します正倉院宝物の模造が、その製作技術も含めて原品を忠実に復元したもので、いずれも一流の技術者・作家によって制作された芸術的価値と学術的価値を兼ね備えたものです。
正倉院宝物の成立には奈良時代に中国と日本を行き来した遣唐使が大きな役割を果たしたことは明らかです。遣唐使・井真成の墓誌をはじめ中国・唐の金銀器や陶器などを展観・紹介いたします特別展「遣唐使と唐の美術」とあわせてご鑑賞いただくことで、東アジアの文化およびその交流の様相など正倉院宝物の国際性を再認識していただくとともに模造および模造作成の意義を御理解していただけることと思います。