棟方志功の作品には佛教や神話などを題材にしたものがたくさんあります。
子供の頃に信心深い祖母と過ごすことが多かった棟方は、何とはなしに宗教というものが身には入っていたようでしたが、昭和11年、宗教哲学者であり民藝運動の指導者であった柳宗悦や陶芸家・河井寛次郎、濱田庄司らの知遇を得、これらの人々から経典をはじめとして様々なことを学び思想的、精神的にも大きな影響を受けました。以来、棟方は画題を経典から得た感動や詩趣豊かな物語に多くを求め、これらを独自の解釈と独創的な表現で数多くの傑作を生み出しました。
また、自然のあらゆるものに佛を感じ、女人の額に丸い星をつけることで佛性を表現した棟方は、後年「板画自体、わたくしには本然とした宗教であります」と語っているように、佛の世界は棟方の板画制作の根源をなしていきます。
このたびの企画では、いとおしむ故郷の風土、環境の厳しさ、貧しさに対する悲しみ、人々の苦しみを佛の慈悲に救いを求めた棟方の祈りの心や荘厳、華麗にして変幻自在、広大無辺な神・佛の世界に畏敬と嘆美の想いを深くした棟方の心情を感じられるような展示を行います。