1914年、新庄市に生まれた近岡善次郎は、東京・文化学院を卒業し、1936年に創立された一水会の最初期から重要なメンバーとして活躍している。全国300カ所以上を訪ねた「明治西洋館」シリーズは美術の枠を超えた文化的な仕事として高い評価を受けている。近岡は石井柏亭、有島生馬らに学んだ洗練された様式で昭和洋画奨励賞、一水会優賞などを受賞し、1956年文部省留学生として渡欧。ヨーロッパの画家に比して、不足する自らのアイデンティティを強化すべく、帰国後は特に好んで故郷の風俗や情景を取り上げた。具象的な造形に抽象的なイメージを加味した、都会的で美しい色彩の作品は近岡独自のもので、親子の愛情や詩情溢れるみちのくの暮らしに生き生きとした聖性を描き出し、日本洋画界に金字塔を打ち立てた。本展は、2004年11月に寄託された、一水会発表の大作を中心とした87点の作品によって、近岡の芸術世界を紹介する。