竹喬が75年におよぶ画業の歩みの中で遺したさまざまな「筆跡(ふであと)」を紹介する展覧会です。
書の世界で、漢字書体の楷書(かいしょ)、行書(ぎょうしょ)、草書(そうしょ)を「真行草」と総称しますが、絵画の世界においても用いられます。竹喬の画風は、折々の変遷があるとはいえ、およそ真体から出発して行体へと移り、再び真体に戻ったように思えます。そして彼の書風もこの画風の変化に沿うものです。
竹喬は、自らの芸術観や人生観を格言的に揮毫(きごう)するということはありませんでした。今回の展示では、竹喬が自詠の俳句を記した短冊、また自詠句に季節の草花を添えた扇面や色紙を中心に、画風の変化と連動した落款や箱書き、さらには笠岡の先人のために記した石碑の拓本(たくほん)、そしてまた彼の人柄を物語る書簡や葉書など約50点の作品と資料により、その素朴な筆跡を楽しんでいただきたいと思います。
*清水比庵(しみずひあん)の新規寄託30点も同時に展示予定です。