小野竹喬の祖父、白神澹庵(しらがたんあん・1824~1888)は幕末から維新にかけて備中地方を中心に活躍した写生派の画家、または南画家です。備中松山(現在の高梁市)に生まれ、主に玉島の柚木家に寄寓しつつ、当地の文人墨客と幅広く交流を重ねて画業を形成しました。浦上春琴(うらかみしゅんきん)に私淑して、春琴風の花鳥画や山水画を数多く残しています。
今回の展覧会では、澹庵の歴遊の地、鳥取県大山町(旧名和町)で発見された嘉永七年(1854)頃の初期作品《双鶏図》をはじめ、最晩年の明治20年(1887)の《山水図》に至るまでの初公開作品を含めた彼の主要作品約30点を一堂に集めます。あわせて師である浦上春琴、同門の鳥越烟村(とりごええんそん)、弟子の河合栗邨(かわいりっそん)、そして孫である小野竹桃(おのちくとう)、小野竹喬(おのちっきょう)などの作品約25点を展示します。
この企画により、竹喬芸術の端緒に繋がる系譜を明確にあとづけるという従来のアプローチだけでなく、澹庵の鮮麗にして柔和な表現を生み出した幕末維新の岡山県西部の芸術土壌を深く掘り下げることが出来れば幸いです。