卯歳生まれの岩崎小彌太(静嘉堂二代、1779~1945)は、兎にちなむ調度や美術品を愛好しました。その代表的な作品が、五世大木平蔵(1886~1941)作、木彫彩色御所人形の一大群像です。大木家は、屋号を丸平といい、京人形司の老舗として江戸時代中期より現在にいたるまでつづいています。この人形は、昭和14年(1939)小彌太の還暦祝いとして孝子夫人が注文したもの。宝船・七福神・鯛車・餅つきなどをテーマとした58体もの人形が、それぞれ兎形の冠を頂いて、笑みをたたえ祝宴をくりひろげています。この愛らしくも品格高い、稀代の傑作の全容を初めて公開し、併せて前田青邨筆「蘭陵王」、横山大観筆「日之出」、堂本印象筆「壽松双鶴図」など華やかな近代絵画を展示します。