1840年のアヘン戦争後、欧米の列強諸国によって次々と租界が設けられた上海は、大量の移民の流入により、20世紀初頭には世界的な国際都市となりました。やがて巨大な消費マーケットに成長した上海では、薬品、化粧品、たばこ、百貨店といった企業が、市場競争を勝ち抜くために商品の宣伝ポスターの制作に力を入れるようになっていきます。
この1920~30年代に制作された商業ポスターは、今日では「上海ポスター」と呼ばれており、「モダンガール」をテーマにしたものが多いことを特徴としています。ファッショナブルなチーパオ(今でいうチャイナドレス)や洋服に身を包み、舶来品に囲まれたおしゃれな室内で過ごしたり、ゴルフや水泳といったスポーツを楽しむ女性の姿は、モダンな生活の象徴として当時、人気を博しました。そしてそれらポスターが生み出した流行のファッションや生活スタイルは、いわば「上海モード」といえるものでした。
時を同じくして、日本において雑誌や広告に魅力的なモダンガールを次々と描き、流行ファッションを生み出していたのが高畠華宵でした。斬新な柄の着物や洒落たデザインの洋服を着た女性を、西洋風の生活スタイルにとけこませて描いた華宵のモダンガールには、上海ポスターの中のモダンガールとの共通性がみられます。また夜会服やパーティードレスにチャイナドレスを取り入れる当時の流行を受け、華宵がチャイナドレスやツーピース型の中国服を着た女性を描いていることも、注目に値します。
上海ポスターと高畠華宵。この展覧会では両者の生み出したモードの共通点から、1920~30年代のアジアにおける同時代性を探ります。