シュテファン・バルケンホール(1957~ )は、現代ドイツを代表する彫刻家です。1980年代の初頭から人間の姿を題材にした木彫りの彫刻を制作し、今日ではヨーロッパを中心に国際的に活躍しています。荒削りな木材に色をつけたバルケンホールの人物彫刻は、普通の服を着た普通の人が、普通のポーズと表情で、台座とともに木から彫り出され、着色され、空間の中に配置されます。それらは私たちの安易な解釈を許さず、心地よい思索へと誘います。抽象的な傾向が強い昨今の美術のなかで、時代錯誤のように一見感じられるかもしれませんが、それらは具象彫刻として新しいものです。特に、古代エジプトからロダンまでの数千年におよぶ伝統的な西洋の彫刻には欠くことのできなかった物語的な要素を排除している点が、バルケンホールの作品の大きな特徴になっています。この展覧会は、そうしたドイツ人彫刻家バルケンホールの作品を本格的に、日本で初めて紹介するものです。初期の典型的な作品から、最近の新たな展開を示すレリーフまで、十分な見応えが期待できる約50点をご紹介します。私たちの時代のヨーロッパの具象彫刻が、私たち現代の日本人に、喜びやくつろぎを与えてくれることでしょう。