東金は、徳川家康の鷹狩の際に造られた御成街道により、江戸時代を通して交通の要衝として栄えました。町は農水産物の集積地として経済的発展をとげ、大商人がパトロンとなって豊かな文化的土壌が育まれました。江戸の大名家旧蔵といわれる狩野派の屏風が、東金の商家に伝来した例などは、中央との往来・文化交流の様相を物語っています。
また幕末の文人・梁川星巖(やながわせいがん)や遠山雲如が、今日でも桜の名所として知られる八鶴湖を訪ね、中国の西湖になぞらえて詩を詠んだことを一つの契機として、文人墨客がこの地を訪れるようになりました。その痕跡は、湖畔の旅館・八鶴館や商家の大店に今なお残されています。
この度の展覧会では、これらの、東金の文化遺産というべき書画を、初めて公開します。前期では、東金御殿伝来とされる杉戸絵や、網元画家・斎藤巻石(さいとうけんせき)の作品などを展示します。また八鶴館に滞在し、星巌の漢詩を書した近代日本画家・松林桂月、「八鶴亭記」を書いた文人安川柳渓などの八鶴湖ゆかりの作品を紹介します。後期には、東金に多くの後援者を持った画家のうち、東金御殿山周辺の風景を描いた茂郷(もきょう)と、関東大震災を描いた絵巻で知られる萱原黄丘(白洞)を取り上げます。
この展覧会が、東金の文化継承、および今後の研究の一助となれば幸いです。
前期 5月26日(木)~6月18日(土)
後期 6月23日(木)~7月16日(土)
前期 八鶴湖と近世の書画
後期 近代の南画家・茂郷と萱原黄丘