生涯を通じで数多くの風景画を残したルオー。労働者とおぼしき人々が佇むわびしい郊外の街角、弟子や漁師たちと共にキリストが描かれた聖書の風景、または神秘的かつ静寂感の漂う夜の情景など、風景はその画業の中でも重要なテーマの一つです。これらの殆どには、景色の中に溶け込むようにキリストが描かれており、不思議にノスタルジーがあふれ恩寵に満ちた世界が広がっています。
ルオーの風景画について詩人のアンドレ・シュアレスは、ルオー宛の手紙のなかで「あなたはレンブラント以来もう幾世紀も現れていない宗教的な風景画に到達できる画家です。」と書き送り賞賛しています。
本展では新収蔵作品の石版画集『伝説的風景』を初公開いたします。また「アトリエ作品」と呼ばれる、ルオーが亡くなるまで筆を入れ続けてアトリエに残された作品群の中から当館に収蔵されている聖書風景のシリーズを一堂に展示致します。
敬虔なカトリックであった画家の深い宗教的ヴィジョンに裏打ちされた荘重でありながらも温かい風景画をご覧下さい。