明治34年、浅草に生まれた岩田専太郎は、大正9年に博文館発行の『講談雑誌』で挿絵画家としてデビューしました。
以来、雑誌や新聞を舞台に、時代小説・現代小説・探偵小説などあらゆるジャンルの挿絵を常に新鮮な感覚で描き、どんな小説家にもそれぞれに相応しい挿絵を提供しました。専太郎は浮世絵の伝統を基盤としながらも、時代の流行を敏感にとらえ、新しい印刷技術を駆使して、大胆な遠近法や装飾的な画面構成などを試みつつ、つぎつぎに画風を変化させていきました。そして、「和製ビアズリー」「専太郎調」といわれる繊細で華麗な独自のスタイルを確立し、老若男女の幅広い読者を魅了し続けました。
本展では、雑誌や新聞の挿絵原画、雑誌の口絵・表紙・挿絵、スケッチ等を中心に、約300点の資料を展覧します。
デビューから50余年、常に挿絵画家のトップに君臨し、死の直前までペンを走らせていた専太郎―その壮絶な挿絵画業の軌跡をたどる、初めての本格的回顧展です。