エドワード・ジャン・スタイケン(1879~1973)は、写真史上最も重要な役割を果たした人物のひとりであるといっても過言ではないでしょう。優れた作家として様々なジャンルに挑み、キュレーターとしてニューヨーク近代美術館の写真部長を勤め世界中で評価を得た「The Family ofMan」展を企画するなど、写真の価値を高めることに尽力しました。
エドワード・スタイケンは、ルクセンブルグに生まれました。幼い頃、家族でアメリカに移住したスタイケンは、この地で写真やデザインを学びます。彼の源流は、ニューヨークでアルフレッド・スティーグリッツに出会った事にさかのぼります。1902年、スティーグリッツは『カメラ・ワークス』を創刊、1905年には291ギャラリー(リトル・ギャラリー・オブ・フォトセクション)を開設し、ピクトリアリズムからストレート写真へのムーブメントを起こします。スタイケンは、その活動を支援し、そのころ、ロダン、マティス、ブランクーシらヨーロッパの芸術家たちとも交流をもち、彼らのポートレイトも撮影しました。
本展は、ルクセンブルグ国立歴史美術博物館の収蔵作品の中から、「ポートレイト」作品52点を展示します。歴史的人物のポートレイトは、その被写体が一般的に理解しやすいために、写真としての質とは別にわかりやすく受け入れられています。しかし写真家が彼らと向き合った時、誰もが知り得なかった部分など、作品には写真家の鋭い視点が強く反映することでしょう。そして写真家にとっては、シンプルな題材だからこそ、かえってその技量が問われます。