多くの人々は、スイスと言えば「山」を思い浮かべるのではないでしょうか?この展覧会では、スイスを示すのに最も典型的なモティーフである「山=アルプス」を取り上げ、18世紀末から今日までの代表的なスイス美術を展観します。
まず18世紀後半の啓蒙主義の時代、自然科学者たちと並んで、カスパー・ヴォルフをはじめとする画家たちが山に対する関心を持ち始めました。19世紀に入るとスイスは現在のような連邦国家になり、雄々しいアルプスは国のシンボルとなります。世紀末から20世紀初頭に至り、象徴主義(セガンティーニ、ホドラー)や表現主義(キルヒナー)、あるいは抽象絵画の分野(クレー)においても山は自立したモティーフとして描かれ続けました。しかしやがて、そのような定着したイメージは20世紀のポップアート以降問いに付されることになります。とりわけ現代の作家たちは、写真やオブジェ、デジタル・アートなどさまざまなメディアを用いて、現代のツーリズムやマス・メディアの影響を無視できないアルプスのイメージに対して批判的に取り組むなど、さまざまな反応を見せています。
本展覧会は、日本においてスイスの現代文化を紹介する「0406スイス・コンテンポラリー・アート・イン・ジャパン」の一環として、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団とアールガウ州の協力により開催されます。雄大な山の風景をどうぞお楽しみください。