1889年、ジャン・コクトーはフランス、パリ郊外の裕福な家庭に生まれました。19歳で詩人として文壇にデビューし、多くの文学者や芸術家、著名人たちと交流をもちます。時代はまさに、ベル・エポック(良き時代)からフォル・エポック(狂乱の時代)への移行期。芸術の都パリには世界中から若い芸術家たちが集まり、新しい文学運動や芸術運動がつぎつぎと展開しました。コクトーは時代の息吹を感じながらも、独自の美学で耽美的な詩の世界を創り出し、小説、バレエ、映画、演劇、そして美術へと、芸術の領域を超えてその才能を発揮しました。あらゆる創造に詩が宿ると考えていたコクトーの作品には、どのジャンルをとっても、コクトーの美学と詩的世界が息づいています。
その幅広い創作活動から、しばしばレオナルド・ダ・ヴィンチにも喩えられてきたジャン・コクトー。彼はまさに20世紀の「万能の人(マルチ・タレント)」ともいえます。本展は個人では世界最大のコクトー・コレクションであるサヴァリン・ワンダーマン・コレクションを中心に、油彩、デッサン、挿絵、宝飾、陶芸、タペストリー、さらにはコクトーの作品をいち早く日本に紹介した堀口大學とコクトーの交流を表す貴重な書籍資料など約280点を展示いたします。