ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国の崩壊後、2003年から新たに民主国家として出発したセルビア・モンテネグロの首都ベオグラードは、長年にわたりバルカン半島、東欧を襲う戦火にさらされてきました。
1844年に誕生したベオグラード国立美術館のコレクションは、そうした苦難の歴史の中にあっても大切に守られ、人々に安らぎと勇気を与え続けてきました。
今回、老朽化した美術館の改修に伴う閉館を機に、同館の全面的な協力を得て、そのコレクションの中核をなすフランス近代絵画が広島、京都、東京など日本全国7都市を巡回することとなりました。(九州では宮崎のみ)
コレクションの内容は、バルビゾン派から印象派を経て、エコール・ド・パリにいたるフランス近代絵画の流れをほぼ網羅していますが、特にルノワールが身近に接したモデルや子供たちを描いた肖像画やドガがその抜群のデッサン力を見せる踊り子や湯浴みする女性像などは、小品ながら両巨匠の特徴を示す珠玉の作品群といえるでしょう。
また、モネの「ルーアン大聖堂」(1892年)、ピサロの「テアトル・フランセ広場、陽光の効果」(1898年)など、それぞれの画家の代表作も含まれており、ロートレック、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソ、ユトリロ、ローランサンらを加え、日本の美術愛好家にとっても、馴染みの深い作家による親しみやすい内容となっています。
なお、ルノワール晩年の力作「水浴する女性」(1915年頃)は、1996年の盗難によりダメージを受けたものの、その後修復によって甦った作品です。
東欧の古都ベオグラードに集まった巨匠たちの作品群123点に特別作品としてひろしま
美術館のルノワール2点を加えた125点をお楽しみください。