福井藩士橋本左内は、早くから俊逸の才を発揮し、学問の研鑚を通じて西洋の理解を深めた一人です。そんな左内も、藩校明道館における洋書習学所の設立にあたっては、洋学の先進性に心を奪われ安易な外国崇拝に陥ることのないよう、厳しく戒めています。幕末から明治にかけて、わが国は海外の知識・技術を積極的に導入し、急速な近代化を進めましたが、左内に代表される和魂洋才の姿勢は、単なる西洋の「模倣」ではなく、日本の学問や伝統技術と融合して、独自の文化を開花させました。
本特別展では、幕末福井における新しい知識・技術の受容について、当館が所蔵する初期写真資料、医学所「済世館」のキュンストレーキ(紙製人体解剖模型)、松平春嶽所用の科学器具などを通して見ていきます。これまで歴史の脇役でしかなかったこれらの器物資料を通して、地域の文化を再確認しようとするものです。