木の町、久万高原にある木造の久万美術館は、木に関わる現代作家を取り上げる企画展として、宇和島市出身の彫刻家、小清水漸の展覧会を開催いたします。
小清水氏は、東京都立新宿高校を経て、多摩美術大学彫刻科に学び、在学中の1967年よりグループ展で作品発表を始めます。当時の活動は、関根伸夫(せきね のぶお)、菅木志雄(すが きしお)、榎倉康二(えのくらこうじ)、李禹煥(り うーはん)、吉田克朗(よしだかつろう)らとともに、「もの派」※作家の重要な一人として国内外に知られています。現在、関西を拠点に木を主な素材にして、日本的な風土性や土着性を強く意識した制作を展開し、日本の現代美術を代表する作家の一人として国際的にも活躍しています。今日までに数々の受賞を重ね、2004年秋には紫綬褒章を受章しました。
愛媛では13年ぶりの個展となる本展では、木に石や水、磁器皿などを組み合わせ、また 、鮮やかな色彩の顔料をほどこした近作・新作を中心に、彫刻・レリーフ・ドローイングなど、立体約30点、平面約10点の計約40点を作品の系譜に分けてご紹介します。また、地元の小中学生や一般の方が一緒に手がけた現地制作の作品も展示いたします。
風土や歴史を踏まえた上で現代を見据え、新たな表現に挑む姿勢と、木を使った制作は、当町・当館にふさわしく、地元の皆さんにも親近感を持っていただけることと思います。素材の味わいを存分に活かしながら料理された作品たちは、きっと何かを語りかけてくれるでしょう。
※「もの派」土、石、木、鉄などの素材にあまり手を加えず、ほとんど直接的に提示する立体構成を行った一連の作家につけられた名称。1960年代末から70年代初頭にかけて日本で展開され大きな注目を集めた。後の世代に極めて大きな影響を与え、また海外での知名度も高い