生命のつながりをテーマに、地球上のあらゆる地域をフィールドにして野生動物や大自然を撮り続ける写真家、岩合光昭(いわごうみつあき)。岩合氏は1950(昭和25)年東京生まれ、1970(昭和45)年にガラパゴス諸島を訪れて自然の驚異に圧倒されたことがきっかけとなって、動物写真家になることを決意しました。以降、世界各地の野生動物を取材し、1980(昭和55)年には『海からの手紙』にて第5回木村伊兵衛写真賞を受賞、1982(昭和57)年から84年にかけては、アフリカ・セレンゲティ国立公園に滞在して写真集『おきて』を出版、世界で20万部のベストセラーとなりました。また、1986年と1994年には、日本人として初めて2度にわたって『ナショナル・ジオグラフィック』誌の表紙を飾るなど、国内外で非常に高い評価を得ています。「Iwago’s Color」と称賛される独特の色とコントラストを持つ作品は、環境と一体化し、自然光の変化に鋭敏に反応することによって生み出されたもので、美しく、見る者の想像力をかきたてずにはいられません。
そうした岩合の視点は、彼のもうひとつのライフワークであるネコにおいても同様で、作品には日常を生きるネコの姿がありのままに写し出されています。野生動物との息を呑むような緊張感に反して、これらの作品からはネコを愛してやまない写真家の優しさが伝わってきます。「ネコが幸せになればヒトが幸せになり、地球が幸せになる」と語る岩合は、ネコが暮らす街の風景を通して、ヒトの住環境のあるべき姿をも問いかけているようです。
本展覧会では、日本各地や地中海で撮影された猫の作品の中から、選りすぐった85点を展覧し、あわせてアフリカや北極圏などで撮影された野生動物作品約15点もご紹介いたします。