『魅かれるモノに魅かれるままジーと眺める。大事なモノは見れば見るほど魂に吸い付き、不必要なものは注意力から離れる。ぼくはこれぞという所にカメラを向け、フレームの真ん中にそれを据え、ピントをギリギリまでよく合わせ、「エイッ」とばかりに気合を込めてシャッターを切る』
土門拳(1974 駸々堂出版「私の美学」あとがきより抜粋)
自分の好きなモノにこだわり、カメラを向け続けるなかで、土門拳の眼は、原始・古代美術、建築・工芸の細部、やきものなどに美を発見していきました。
たとえば、土器、埴輪、錠、蝶番、釘隠、襖の引手、杓子、武具、壺、皿、箪笥、扇、櫛、のれん、・・・。それら日本人の美意識がつくりあげた「かたち」の数々が、芯までホンモノにこだわる土門の意思で選定された被写体となっています。いいものはいい。土門の美学がそこにあります。