“隆能源氏”とも称されている国宝「源氏物語絵巻」は、日本美術を代表する最も有名な絵巻です。製作当初は『源氏物語』全五十四帖の絵画化が試みられていたと考えられていますが、永い伝来の途中にその多くが失われ、阿波・蜂須賀家に伝来した五島美術館所蔵分および、尾張徳川家に伝来した当館所蔵分合わせて十二帖十九段、さらに諸家に分蔵されている断簡を含め二十帖分が伝えられているのみです。それでも流麗な詞書の書・美しく装飾された料紙・典雅な絵とが一体となって、900年近くの星霜を経た現在にまで王朝の貴人たちの雅びな美の世界を余すところなく伝えてくれます。開館70周年という記念すべき年にあたり、当館の所蔵品に加え五島美術館所蔵の「源氏物語絵巻」や断簡類を含め、10年ぶりに名古屋の地で一堂に公開します。