豊麗な色彩と詩情に富んだ幻想をもって、愛を謳い、生きる喜びを絵筆に託し...、いまなお世の多くの人に愛されつづけているシャガール。
エコール・ド・パリの画家であり20世紀絵画の代表的巨匠のひとりに数えられるマルク・シャガール(Marc Chagall 1887-1985)が、古代地中海の恋愛小説をもとに制作したリトグラフによるシリーズ版画『ダフニスとクロエ』全作品42点を展覧いたします。
ものがたり
エーゲ海に浮かぶ美しい島レスボス。善良な山羊飼いに拾われた捨て子の少年ダフニスと、羊飼いに拾われた同じような境遇の少女クロエ。二人は牧童として育てられ、豊かな自然に囲まれて無邪気に成長するうちに、いつしかお互いを想い慕うようになる。ところが、あるときは二人の仲を妨げる恋敵があらわれ、またあるときは隣国とのあいだに起こった戦いのために命の危険にさらされるなど、二人に試練や災難がふりかかる...。
やがて、四季のうつろいとともに、さまざまな困難をくぐりぬけたのち、成熟した二人は恋を成就させ、養父母や、見つかった本当の父母らに祝福されながら婚礼の夜をむかえ結ばれるのであった。めでたしめでたし...。
小説「ダフニスとクロエ」は2-3世紀頃のギリシャの詩人ロンゴス作とされる牧歌的な恋の物語。古くから創作の源泉として絵画にとりあげられられることが多く、また美術以外にも、フランスの作曲家ラヴェル(Maurice Ravel 1875-1937)によるバレエ組曲が有名です。
本展は『ダフニスとクロエ』全作品と同時に関連の資料類などを併せて展示いたします。