西に京の都、東に琵琶湖を望む世界文化遺産「比叡山延暦寺」。
八〇六年(延暦二十五年)、天台宗はこの地で始まりました。宗祖・最澄(伝教大師)は、身分の差なく、仏教はすべての人々を救うと説き、比叡山延暦寺にはその教えに魅せられた多くの僧たちが集いました。最澄は「国宝とは何物ぞ」と問いかけ、「人」とその答えを著しています。鎌倉時代には、比叡山に学んだ僧から、法然(浄土宗)、栄西(臨済宗)、道元(曹洞宗)、親鸞(浄土真宗)、日蓮(日蓮宗)ら開祖が誕生し、天台宗は日本仏教の母なる存在として、大きな役割を果たしてきたのです。
本展では、全国の天台宗関係寺院に伝わる代表的な文化財を一堂に展示し、法華経、阿弥陀浄土信仰から密教、山王神道にいたる、日本天台ならではの幅広い信仰が育んだ仏の美の世界を紹介します。
秘仏の滋賀・善水寺所蔵薬師如来像(重要文化財)をはじめとする本尊仏がいくつも寺外で初公開されるなど、これまでになく充実した内容です。さらに京都の天台宗寺院六十余ヵ寺の寺宝を京都国立博物館が一年半にわたって調査した結果発見された品々も、このたび初めて公開いたします。