本展では、新収蔵品スゴンザックの挿画本「農耕詩」を紹介します。デュノワイエ・ド・スゴンザック(1884-1974)は、フランスの画家・版画家です。初期の作品は重々しく表現性の強いものですが、後に明るく色彩に富んだ印象派風の傾向を示し、プロヴァンスやイル・ド・フランス地方の風景を詩的で力強い写実様式で描いたことで知られます。
本展で紹介する〈挿画本〉とは、詩集や小説に美術家のオリジナル版画を入れ部数限定で出版される本のことをいいます。画商アンブロワーズ・ヴォラールがこの分野に情熱を注いだ20世紀初め頃より、独立した芸術表現として定着しました。
2巻からなるスゴンザックの挿画本「農耕詩」では、古代ローマの最大の詩人プブリウス・ウェルギリウス・マロ(B.C70~B.C19)による自然や田園の美しさをうたった詩篇「農耕詩」がスゴンザックの母国語であるフランス語とウェルギリウスが著したラテン語で併記してあり、スゴンザックによる挿絵が入っています。
この展覧会では、フランスの自然や農村の生活を生き生きと伝える版画作品およそ100点を紹介します。