シュルレアリスムの運動に関わった才能あふれる女性芸術家の中でも、レオノール・フィニ(1907-1996)は、その幻想性あふれる美しい画面と奔放なエロスの表現によって、ひときわ異彩を放っています。フィニは、トリエステ、ミラノ、ミュンヘン、パリと各地を巡り、様々な芸術家たちと交流しながら、絵画のみならず、幻想的な小説や、バレエ、演劇などの舞台美術や衣装など幅広いジャンルの芸術と絡み合った活動を展開しました。
フィニは自身の芸術の信念に従って奔放に生き、シュルレアリスム運動との交流、その多大な影響関係にありながら、公的にはいかなる芸術運動にも関わることがありませんでした。そのことと、女性作家に対する評価が定まらなかったという背景、そしてフィニの多分野に渡る活動のため、多くの芸術家たちが彼女の芸術に対し惜しみない賛辞を捧げていたにもかかわらず、フィニの作品の評価に関して、これまでは意見が分かれてきました。しかし、彼女の作品からは、一人の芸術家の、表現を通じて生き、存在しようとする強い意志に驚かされると同時に、何かに規定されることを拒み、「私の職業はレオノール・フィニです。」と言い切る彼女の生き方や、近年の多くの女性芸術家に対する再評価の成果を背景に、彼女の作品は現代の私たちにとって新たな意味を帯びてくるのではないでしょうか。
今回の展覧会は、画家の没後はじめての日本での展覧会になります。初期のシュルレアリスム色の強い作品から晩年に至るまでの絵画作品約80点を中心に、フィニが手がけた舞台衣装や自らを演出するために作った仮面など約100点の多彩な出品作品によってフィニの全貌を明らかにしようとするものです。