山下清は1922(大正11)年3月10日、東京の浅草で生まれました。3歳の時病にかかり、その後後遺症として軽い言語障害が残り、12歳で千葉県の養護施設に入園しました。そこで教育の一環として行われていた貼絵と出会い、美術の才能を開花させていきました。
1939(昭和14)年に銀座で行われた展覧会で、梅原龍三郎、安井曾太郎から「その美の激しさ、純粋さは、ゴッホやアンリ・ルソーに匹敵する」との称賛を受け、ここに、画家・山下清が誕生しました。
しかし、18歳になるとリュックサック一つで学園を飛び出し、32歳まで自由気ままな放浪生活を繰り返しました。旅先ではスケッチなどいっさいせず、ふらっと学園に戻ってきては、旅の思い出をノートに文章で残し、エネルギッシュに貼絵の制作を続けました。
自然と風景を愛し、豊かな詩情を貼絵や水彩に表現し、「日本のゴッホ」「放浪の天才画家」などと呼ばれ、日本中の人々から親しまれた山下清。その作品は、実際の風景より色鮮やかで暖かく、日本人が求めるどこか懐かしい情景で、いまも多くの人々に感動を与え続けています。
「今年の花火見物はどこに行こうかな」の言葉を最後に、1971(昭和46)年7月12日の朝、49歳でこの世を去りました。
本展は、新市施行並びに新見美術館会館15周年を記念して開催するもので、山下清の初期から放浪時代、晩年に旅したヨーロッパの風景など、貼絵中心に油彩画、水彩画、素描画など120余点を紹介します。