中国の宋時代に美の極致をむかえたといわれる青磁。中島宏氏は、この最も難しいといわれる青磁に果敢に挑んで、研究と試行を繰り返してきました。
中島宏は1941(昭和16)年に窯元の家に生まれ、家業の製陶を手伝い始めました。二十代で「どうせつくるなら技術的に難しいが、焼き物の最高といわれる青磁をつくろう」と決意し、中国古窯青磁の完璧なまでの美しさを追求、古陶の「写し」にどどまる作家の多い中にあって、中国の青銅器に触発されて彫りを入れたり、あるいは印象派の絵から、釉薬を重ねて色に深みを出す試みに挑みました。「宇宙を作品に表現したい。空は無限に広がる。連想し、空想し、目に見えないものを」と目指す中島氏は、鮮烈な、まさに独創的な中島青磁というべき作品を生み出してきたのです。1981年に第1回西日本陶芸美術展で内閣総理大臣賞を受賞したのを皮切りに、1983年に日本陶芸協会賞、1996年にはMOA岡田茂吉大賞、藤原啓記念賞の同時受賞など多くの受賞に輝いています。本展では、中島芸術の真の魅力を提示すべく、その初期の作品から最新作まで約100点を選び陳列いたします。雄勁な魅力に溢れる中島青磁の世界に触れていただきたく思います。