1900年前後、ヨーロッパを中心に花開いた国際的な芸術様式アール・ヌーヴォー。その立役者の一人と言っても過言ではない人物、それが東欧チェコ出身の画家アルフォンス・ミュシャでした。波打つような曲線と華やかな色彩。花や植物、宝石などとともに描かれた女性像はベル・エポック―古き良き時代―を今まさに迎えようとしていたパリで一世を風靡します。その名声は遠く大西洋を超えアメリカにまで達しました。
アール・ヌーヴォーを代表する画家ミュシャの魅力をご紹介するこの展覧会では、そのような華々しいイメージとは別の側面にも光があてられます。同郷の作曲家スメタナの『わが祖国』に相通ずる大作「スラヴ叙事詩」、さらに、民族衣装に身を包んだ人々や故郷の風景を描いた作品は、異邦人として外国で過ごしたミュシャの中で芽生えた愛国心を抜きにしては語れません。また、ミュシャ自らが撮影した写真からは、制作の舞台裏とともに、家族や友人たちと過ごす時間の親密な雰囲気が伝わってくることでしょう。
本展覧会はロンドンにあるミュシャ財団の全面的な協力を得て開催されます。約100点の日本初公開作品を含む240点の作品を通して浮かび上がる多様なミュシャ像をどうぞご堪能下さい。