柳宗悦(やなぎそうえつ 1889-1961)は日本独自の芸術運動ともいえる「民藝」の創始者、推進者として知られています。柳はそれまで顧みられなかった日本の日常的な工芸品や、身近な信仰の対象である仏像などに宿る健やかな美を見いだし、この美の領域を「民衆的工藝」すなわち「民藝」という言葉によって定義しました。
柳の考えの根底には、その物を生み出した社会への関心と、作り出した人々への深い共感から生まれた倫理観があります。こうした「精神」と「実践」という背景をもつ故に、柳は単なる美学者にとどまらず、近代日本を代表する思想家・実践家として現在まで評価されているのです。
この展覧会では、柳が収集した数々の名品約90点と、民藝運動に関わった作家たちの作品約60点、そして民藝に関する貴重な資料などを併せて紹介します。
富本憲吉、バーナード・リーチ、河井寛次郎、濱田庄司、芹沢けい介、棟方志功、黒田辰秋は、柳の理念や感性を共有し得る優れた思想家であり、また同時に造形を通して実践した人々でもありました。彼らの作品を併せて展示することで、「民藝」の軌跡と意味を改めて考えてみる機会となることでしょう。