「地球を彫刻した男」……そう称されることの多い世界的な芸術家イサム・ノグチ(1904-1988)。彼の最後にして最大の作品である≪モエレ沼公園≫が没後17年の歳月を経て、今年7月に札幌市に完成しました。滑り台、ブランコといった遊具はもちろんのこと噴水や築山に至るまで189ヘクタールにも及ぶ公園全体がノグチのマスター・プランに基づいて創られ、生涯をかけて彼が夢見た大地の彫刻作品がここに誕生したのです。
公園のグランド・オープンを記念して開催される本展は、公園や遊び場の造形という視点からノグチの新たな魅力を紹介し、あわせて20代から晩年までの多彩な活動の全貌を辿るものです。
石の彫刻家として有名なノグチですが、舞台装置、環境芸術、陶芸、家具・食器・照明のデザインなど彼の興味は軽やかに芸術のジャンルを横断し、革新的でユニークな足跡を残しています。
またその活動場所も父の国である日本、母の国であるアメリカを中心にヨーロッパ諸国やその他の国々まで広がり、旅人のように地球規模で活躍したアーティストだったと言うことができるでしょう。
本展はニューヨークのイサム・ノグチ財団・庭園美術館所蔵の作品を中心に46点で構成され、牟礼のイサム・ノグチ庭園美術館から門外不出とされていた石彫の代表作≪エナジー・ヴォイド≫が特別出品されます。またモエレ沼公園の遊具も会場内に設置し、触って遊べる体験空間や作品とのよい出会いを提供する教育プログラムをお楽しみいただけます。イサム・ノグチが残した無限の創造力は、21世紀を生きる私たちに、今も輝きを失うことなく多くを語りかけてくるでしょう。