日本陶磁史上、江戸時代のやきものは最も華やかな展開を遂げたことで知られています。その中でもっとも画期的なことは、江戸時代初期1610年代に、肥前国・有田において日本ではじめて磁器の焼成が成功したことです。以後、肥前の磁器は伊万里焼と呼ばれ、日本の磁器生産の中心として発展を遂げ、多彩な磁器を生み出していきました。
特に17世紀から18世紀初頭にかけての江戸時代前期は、様々な色絵磁器が華麗な様式展開を繰り広げていきました。かつて「古九谷」と呼ばれ、1640年代中国の技術を導入して初めて焼造された初期色絵磁器とされる「五彩手」や「青手」は、日本固有の意匠をあらわし、独特の豪奢な雰囲気を醸し出しています。また、1680年代頃からは、「濁手」と呼ばれる乳白色の素地に瀟洒な絵付けを施した柿右衛門様式がヨーロッパへの輸出向けとして人気を博します。さらに1690年代になると、「オールドジャパン」と呼ばれ、初めてヨーロッパで日本製磁器として認められた古伊万里・金襴手様式が、室内装飾品としてヨーロッパの諸宮殿を飾りたてました。
本展では、館蔵の日本陶磁コレクションより、有田の初期色絵磁器とされる「古九谷」を初め、ヨーロッパ向けの輸出磁器として展開した柿右衛門様式や金襴手様式の古伊万里約50件を一堂に展観し、ヨーロッパの窯業にも大きな影響を与えた和様の磁器「古伊万里」の魅力に迫るものです。