絵画のなかに映画が見える
世界中の映画ファンを楽しませ、<世界のクロサワ>として海外の映画人にも大きな影響を与えて、はかり知れない偉大な功績を残した日本映画界の巨匠・黒沢明。映画に注いだ彼の情熱は、デビューから晩年まで、称賛を浴びつづける数々の名作を生み、その映像は、今も私たちを魅了します。
黒沢明は青年時代に二科展に入選するなど、一時は画家を志したほどの豊かな画才を示しました。映画をつくる際にも、その才能を発揮し、ひとつひとつの場面のイメージを描いた「絵コンテ」を制作して撮影にのぞんでいます。黒澤にとって「絵(画)」と「映像」は一体のものということができ、身魂こめて描きあげた絵コンテを通して、映画の完成度を高めていったのです。
本展は、≪影武者≫≪乱≫≪夢≫など、名作・名シーンを描いた数多くの絵コンテの中から約160点を厳選して紹介し、黒澤芸術の創造の秘密に迫ります。映画への熱い想いと気迫のこもった絵コンテは、まさにアートであり「絵画」。迫力あふれるこれらの絵画のなかに、いきいきと躍動する映画を感じることでしょう。