うつすこと まなぶことは 美の創造の原点だ!
作品をうつす「模写・模造」は、洋の東西を問わず多くの芸術家によって繰り返し行われてきました。たとえばローマ時代には、ギリシャ彫刻の名作が数多く大理石に模刻されました。中国(明)に渡った室町時代の画聖・雪舟は、模写によって異国の画風や技法を学び、それを礎に多くの傑作を生み出しました。そして雪舟の作品は、江戸時代の狩野派の画家たちに盛んに写されているのです。一般に模写・模造は「ほんもの」ではない価値の低いものとされています。しかし、美術工芸の製作の過程では「模写・模造」こそが、さらなる創造を生み出す原点であり、古典の再生をもたらす原動力となってきたのです。
「古典にまなべ」岡倉天心と近代美術の巨匠たち
この展覧会では、明治初期、フェノロサの哲学を受容し、近代日本美術の構築に奔走した岡倉天心を中心にした模写・模造事業に焦点をあてます。東京美術学校長であり、帝国博物館美術部長であった天心は日本画の横山大観や下村観山、木彫の竹内久一など新進気鋭の美術家に古典美術の模写・模造をさせました。模写・模造が日本美術にさらなる創造をもたらしたことは、その後の彼らの輝かしい活動をみれば明らかです。普段あまり公開されることのない、これら巨匠たちによる模写・模造作品を一堂に展示し、近代日本美術の原点をご覧いただきます。
文化財を永遠につたえる「模写・模造」
高松塚古墳壁画や法隆寺金堂壁画の模写、正倉院宝物の模造なども展示。文化財を「つたえる」という模写・模造の大きな役割にも注目します。