自分の子ども時代の記憶や関心にもとづき、終末の未来を生き抜くための機械彫刻を制作するヤノベケンジ。彼は、ユーモラスな造形に鋭い社会的メッセージを忍ばせる作品によって、1990年代初頭から国内外で常に大きな注目を集めてきました。
ヤノベは21世紀の幕開けとともに、制作のテーマを「サヴァイヴァル」から「リヴァイヴァル」へ緩やかにシフトさせてきました。それは「世界の終わりを延長させること」から「未来を作っていくこと」へのポジティブな方向への移行です。こうした変化は、大震災、サリン事件、そして<9・11>テロ事件にイラク戦争など、相次いで起こった深刻な出来事によって、社会の変化や時代の行方を展望することができない我われの危機感と無関係ではないでしょう。ヤノベは、繁栄と災厄を生み出した現代社会のアンビヴァレンスを見据え、夢と現実の狭間で葛藤しながら、新たな未来を育んでいくためのヴィジョンをえがき始めたのです。
「KINDERGARTEN/キンダガルテン」(幼稚園・保育所)と題された本展覧会では、21世紀初の万博である愛知万博も視野に入れ、次代を担う人たちの”創造の種”となるヤノベケンジのダイナミックな新作を紹介します。像高7,5mにおよぶ腹話術の巨大人形≪ジャイアント・トらやん≫、産業廃棄物で造ったマンモス型木馬≪Rocking Mammoth≫など、巨大な幼児の保育ルームのようなインスタレーションが展示室に出現します。本展において鑑賞者は、ミクロとマクロの視点が交錯する不思議なヤノベ・ワールドを体感することができるでしょう。
誇大妄想狂ヤノベケンジによる、夢見る大人と子どものための展覧会が、いよいよ開幕します。