昨年11月リニューアルオープンされたニューヨーク近代美術館のこけら落としを飾った「ニューヨーク近代美術館[MoMA]巡回建築展 谷口吉生のミュージアム」を開催します。谷口吉生は当丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の設計者でもあり,今春オープンした香川県立東山魁夷せとうち美術館の設計などでもよく知られています。
MoMA(モマ)の愛称で知られるニューヨーク近代美術館は,1929年の設立以来,近現代美術シーンを常に牽引してきました。コレクションは,現在6部門約17万2000点を超え,文字通り世界を代表する美術館の1つであり,1932年には現在地の53丁目を拠点として以来,NYのランドマークとしても人々に愛されてきました。また建築もグッドウィン&ストーン,フィリップ・ジョンソンそしてシーザー・ペリによる設計・改装を経て「モダン」を体現する建築の歴史が示されてきました。そのMoMAが21世紀への新たなヴィジョンのもと過去最大規模の増改築計画に際して実施した国際招待設計コンペティションにおいて,10人の世界的建築家の中から指名を獲得し,一躍世界中の注目の的となったのが谷口吉生でした。
谷口吉生は出発点である資生堂アートハウス以来,数々のミュージアム建築を手がけ現在世界で最も美しい美術館を作る建築家と評されています。光の満ちる軽やかで洗練された空間。周到にめぐらされた機知に富んだ視覚効果。統制されたプロポーションが生み出すフォルムと,それに呼応する繊細で精緻を極めた素材と質感へのこだわり。谷口の生み出す建築には,建築が個性的であるほど不可避ともいえる構造的呪縛や圧迫感から解き放たれた,自由に伸びゆく空間を感じることができます。また周囲の環境や立地の歴史的背景と響き合う関係は,谷口建築の最大の特徴と言ってよいでしょう。
本展では,谷口吉生がこれまでに手がけたMoMAと国内計12のミュージアムのプロジェクトを建築模型,図面,写真,映像などによって紹介するとともに,話題のMoMAについては,その建築の歴史,設計コンペの模様,谷口案が採択されてから建設に至るまでを多角的に検証します。谷口自身の手による美術館の内部空間で展示されることは,来訪者の感性を深く揺さぶり,静かな感動を呼び起こす谷口建築の真髄を体験する好機となるとともに,12のプロジェクトにおける丸亀の位置付けを・・・