土谷武は1926年、京都市で製陶業を営む家に生まれました。東京美術学校(現・東京芸術大学)で彫刻を学び、卒業後は塑像による人体表現を手掛けていましたが、1961年からのフランス留学を機に構成的な抽象彫刻に携わるようになります。
帰国後は鉄や木、石といった様々な素材を扱い、それらとの対峙を通して素材の内から生まれ出てきたかのような情動や動きに満ちた、想像性溢れる作品で注目を集め、新制作協会展や各地の野外彫刻展などで活躍しました。
旭川市が主催する中原悌二郎賞をはじめ、数々の賞を受賞するなど戦後日本の彫刻界を代表する存在として輝きを放ち続けていましたが、2004年10月に惜しまれながら急逝しました。
本展では、第21回中原邸二郎賞を受賞した代表作<植物空間>のシリーズや、北海道療育園に設置されている土谷武最後の作品<開放Ⅵ>のエスキースなど、特に空間と作品との関わりが強く意識された作品群を中心として土谷芸術の一端をご紹介します。ものとしての存在よりも空間を創出することを託された作品たちは、作品が内包する空間と周囲の空間とを呼応させ、そこに生きた世界を紡ぎだしています。響き合う空間の息吹をご体験ください。