京都には創業100年以上で老舗表彰を受けている企業が、1600余あり、なかでも江戸時代に創業した伝統ある染織関連の老舗は130にものぼります。京都の中心的産業のひとつである染織業の歴史は、京とのすぐれた美意識を映し、また京都の文化をリードし続ける存在であるといえるでしょう。
今年、2005年に創業450年を迎える千總は、そうした京都の代表格といえる京友禅の老舗です。
千總は弘治元年(1555)に千切屋与三右衛門が京都室町三条で法衣商を営んだことにはじまり、友禅染の小袖を手がけるようになったのが江戸時代中期といわれています。小袖のデザインを画期的に変革した友禅染の技法は、文様表現の可能性を広げ、いっそう華やぎを加えました。きものの代名詞ともいえる「ゆうぜん」ですが、それに携わる千總の基盤には、日本の近世以来の豊かな染織文化が源流にあるといえます。
千總の足跡は、近世の町衆の文化的教養の高さを示す貴重な一例として注目されるものです。そしてこのように最高の染織作品を創る環境を充実させ、資料として蒐められた小袖・屏風の数々は、とりわけ意義深いものとなっています。
本展では、染織・絵画の優れた千總コレクションを幅広くじっくりご覧いただくとともに、京都を舞台に花開いた優雅な文化の背景をご紹介します。