細井繁誠の描く作品には、いきいきとした動きを感じます。例えば伊豆三津浜の風景。時に流れるように、時にリズミカルに、絵画のタッチを微妙に使い分けています。それは、夏の風を頬で感じ、海のきらめきを目に焼きつけた、繁誠の五感そのものです。また、船上で語らい、浜に遊ぶ人々の姿。シンプルな形ですが、顔を互いに向き合わせ、足どりも軽く、人々のはずむ気持ちを的確に表しています。それは、人の心に敏感な繁誠の人柄そのものです。
今年、繁誠の生誕百年を迎えるにあたり、ゆかりの地における初の回顧展を開催いたします。油彩、スケッチ、水彩等約50点により、伊豆の海や三島の街、身近な草花を題材とし、奔放さと優しさをあわせもった繁誠の作品の魅力を、この機械に是非ご堪能ください。
●細井繁誠(1905~1977)略歴
三島の三ツ谷に生まれる。韮山中学を経て中泉農学校(現磐田農業高校)に学ぶ。高校を卒業後、洋画家・和田三造に内弟子入り。1926年帝展に初入選、以降入選を重ね無鑑査となる。やがて三島へ戻り、絵画グループ「十日会」を設立。戦後は日展を離れ、1958年に「新協美術会」を創立。また三島美術展の審査員を務めるなど、故郷の芸術振興に尽力。1972年、三島の夜景を描いた「暮色」で文部大臣賞を受ける。