日本では、印象派とそれ以後のフランス絵画を中心とした美術に特に人気があります。例えば印象派の絵画であれば、見ているだけでそこに軽やかな空気の流れやまばゆい陽光を感じることが出来ます。それは文字通り見ることの楽しみであり、純粋に視覚的な効果によって成り立つ絵画であると言えるでしょう。しかし西洋の長い絵画の伝統の中では、宗教や神話、文学、歴史に深く根ざしたそれまでの「物語る」絵画の方がむしろ主流であったとも言えます。それぞれの時代や画家の様式の違いはあれ、連綿と続く「物語性」の絵画の中にこそ、西洋の絵画の真髄を見出すことが出来るでしょう。
本展ではそのような西洋の伝統絵画を、山形市の山寺にある後藤美術館のコレクションの中から18、19世紀を中心とした作品72点で紹介します。展覧会は、Ⅰ.宮廷絵画からアカデミスムへ、Ⅱ.バルビゾン派とその周辺、Ⅲ.ヨーロッパ諸国の絵画、の3部で構成されています。Ⅰ部ではブーシェに代表されるロココの絵画から新古典主義、ロマン主義、アカデミスムの絵画を、Ⅱ部ではコロー、ミレー、ルソーなどのバルビゾン派とクールベを中心に、またⅢ部ではイタリア、スペイン、イギリスなど各国の絵画を紹介します。
これらの絵画は、時代、地域、またそれぞれの画家によって様々な特徴を示していますが、そのいずれもが「物語る」絵画としての魅力に満ちています。伝統に裏付けられた西洋絵画の様々な物語をお楽しみ下さい。