天性の自由人であり、独創的な絵を創りあげた画家熊谷守一(くまがい・もりかず)は、1880(明治13)年岐阜県の裕福な商人の家に生まれました。東京美術学校(現・東京芸大)西洋画科で黒田清輝らの教えを受けます。同級生には青木繁、山下新太郎らがいました。卒業後、樺太調査隊に参加、また郷里で山の木を切り出すアルバイトなどをした後、上京して二科会に発表します。
東京都豊島区の小さな家に住み続け、三十年間ほとんど外出せず自宅の小さな庭に住む生き物たちを、徹底的に単純化して描きました。文化勲章も断って自由と自分の時間を大切にし、97歳の天寿を全うします。仙人と呼ばれ、無欲で清貧なくらしから生み出された純粋な絵や書は、多くの文化人や経済人をも魅了しました。
名古屋の美術収集家木村定三氏も熊谷守一に魅了された一人で、40年もの長きに亘り親交を保ち、質の高いコレクションを形作りました。木村氏のコレクションは氏の歿後、愛知県美術館に寄贈されました。この展覧会ではそのコレクションから、油彩画、日本画、書など約150点を展示します。希有な<自由人>熊谷守一の魅力に触れてみてください。