Ⅰ「人間国宝の花」
[人間国宝・巨匠コ-ナー]では、春の趣向で人間国宝による花の作品を特集します。蒔絵の松田権六や染色の芹沢銈介らは花を図案意匠とし、あるいは白磁の井上萬二や?漆の増村益城らは花のかたちを主題として日本の豊かな風情を表しています。そうした優れた伝統のわざと創作性が発揮された作品約25点を陳列いたします。
Ⅱ「近代工芸の百年」
日本の近代工芸の流れを所蔵の優品によってたどります。近代社会が国内事情だけでなく国際的動向とも連動してたくましく発展してきたのと同様に、近代工芸もまた、保守的傾向と革新的な指向とが拮抗しながら、大きな展開と多様な創造を達成してきました。
万国博覧会や輸出工芸の明治時代を彩った初代宮川香山の高浮き彫りの花瓶や七代錦光山宗兵衛の色絵の作品をはじめ、近代的な芸術的個性を誕生させた板谷波山や富本憲吉、昭和初期頃の欧米の芸術思潮に影響を受けた高村豊周や内藤春治らのいわゆるモダニズムの工芸家たちや民藝運動を推進させた河井寛次郎や浜田庄司、バーナード・リーチらの作品、また古典復興を図った石黒宗麿や北大路魯山人らは戦後に大きく個性的創作を開花させました。戦後には、社会経済の復興と思考表現の自由が浸透していくなかで、デザインという新たな思考と融合した生活工芸やクラフトの創造、走泥社に代表される前衛的な工芸の表明があり、また伝統工芸が人間国宝を中心にして大きな潮流となる一方で、1960年代には造形への意識を高めた工芸の高揚がありました。さらに1980年代以降現代にいたって、拡張する現代工芸は、伝統素材や技法、器物性といった工芸的要素を見直しあるいは現代美術的思考への同調を示しながら、高度な様式美と多様化を現してきました。ここではそうした運動や重要な展開を示す作品約90点を陳列いたします。