花といえば『桜』というように、日本人にとって桜は最も身近な花と言えるでしょう。紙の博物館の位置する飛鳥山・王子周辺は八代将軍徳川吉宗の植樹以降「桜の名所」として江戸庶民の大変な人気を集めていました。明治に入ると、渋沢栄一の提唱する抄紙会社(後の王子製紙)が飛鳥山の麓に開業(明治8年)、さらには鉄道も開通(明治16年)するなど、今度は文明開化を象徴する「東京名所」として知られるようになりました。桜と共にモクモクと煙を吐く製紙場の煙突がそのシンボルとして鉄道唱歌や錦絵の中にも登場します。
また、日本が世界に誇る浮世絵版画や、明治期後半を中心に盛んに輸出され宮殿や洋館などの壁を彩った豪華な金唐革紙の制作などに欠かせない版木には、桜材が使われています。さらには「桜」の名を持つ紙など、一見何の関わりもないように思える桜と紙の意外なカンケイをご紹介します。さらに、桜をモチーフにした様々な紙製品も併せて展示します。博物館入口ではカワイイ桜の風車が皆さんをお迎えします。飛鳥山公園の桜と共に、紙博ならではの『花見』をお楽しみ下さい。
なお、会期中には関連事業として『金唐革紙制作実演』(4/2、4/9)と『錦絵手摺り実演』(5/3)を行います。