今回、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では、風景をテーマにした展覧会を開催します。
風景は、景観問題や環境問題、さらにはライフスタイルの変化などとの関係の中で、近年特に注目を集めているテーマですが、そもそも「風景」とはいったい何なのでしょうか。これが本展の出発点となっています。一口に風景と言っても、時代や地域、また個人の認識の仕方によって、その言葉から連想されるイメージは千差万別です。つまり風景とは、さまざまな感覚器官を通して知覚した事象を、意識の中で組み立て直したものだと言えるでしょう。したがってアーティストによって表現された風景も多種多様なのです。この「風景」という多様性の地平を遊歩(クルーズ)すること。
それが本展の基本姿勢です。
また本展は、《あたらしい風景》と《みえない風景》という2つのセクションで構成されており、国内外のアーティスト21名の作品、約30点を展示します。出品作家は、牛島憲之や猪熊弦一郎といった戦前から活躍していた画家から、野村仁、柳幸典、曽根裕、会田誠ら気鋭の現代美術家まで、また写真表現を用いる畠山直哉、やなぎみわ、野口里佳、小野博から、サウンドアーティストの藤本由紀夫や映像/音響アーティストの高木正勝、さらには異能のいけばな作家・中川幸夫まで、その制作年代や表現手段はバラエティに富んでいます。
日々を過ごす中でなにげなく目にしているものでも、別のまなざしを得ることでたちまち風景として姿をあらわすことがあります。《あたらしい風景》では、作品という「窓」から、未知の世界を見渡すための新しいまなざしが発見できるでしょう。そして私たちは《みえない風景》に自分の内面を照らし合わせれば、そこには想像力がつくりだす内なる風景が広がります。このとき作品は内面を旅するための入口となるはずです。
風景表現がひらく、外界と自己とを双方向に結ぶ回路を遊歩し、あなた自身の「風景」をみつけてみませんか。