本県出身の洋画家で、鬼才という言葉がぴったりと似合うのは宮本三郎と鴨居玲でしょう。その二人は師弟関係にありました。昭和21年に金沢美術工芸専門学校(美専、現、金沢美術工芸大学)が開校し、宮本は洋画科の講師を務め、鴨居は第一期生として宮本に師事します。二人の関係は、新聞記者であった鴨居の父、遙が、美専の創立に深く関わり、また宮本と懇意にしていたこともあって、単なる教師と生徒以上のものがありました。宮本は鴨居の才能を大変買っていましたし、鴨居は宮本を深く尊敬していました。宮本が二紀会を創立して金沢を去ると、鴨居は在学中から二紀に出品し、頭角を現していきます。宮本の石川県繊維会館(現、金沢市中央公民館西町館)の壁画や、大阪南町会館の緞帳制作も鴨居が助手を務めていました。でも、破滅型の鴨居は制作に苦しんで、絵をやめようと考えたり、二紀を退会したりまた入ったりと、宮本を少々手こずらせた弟子であったかもしれません。
本年、平成17年は、明治38年生まれの宮本にとっては生誕百年、昭和60年に死去した鴨居にとっては没後20年にあたります。そこで、当館所蔵品を中心に「宮本三郎と鴨居 玲」を開催いたします。師の宮本が明るく華麗な色彩で、優美な女性像や裸婦を描いたのに対し、鴨居は、暗く重い色調で、醜怪な酔いどれや老婆を描くという対照を見せます。でも、作品は共にドラマ性が強く、その中で人間像を追求し、そして画面は油彩本来の艶のある見事なマチエールが展開されています。両者の個性をあわせてご覧ください。
主な展示作品
宮本三郎 - 阿修羅、加賀獅子舞、歌手、裸女達に捧ぐ、熱叢夢、鼓
鴨居 玲 - 蛾と老人、おばあさん、望郷を歌う、1982年 私、酔って候