1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から10年の月日が経とうとしています。
芦屋市立美術博物館は、震災直後から市内の被害状況の調査、資料の救出など地域の美術博物館としてできることを考え、作品、資料の保存に努めてきました。
なかでも文化庁の支援による文化財レスキューによって救出された写真家中山岩太の資料は、その後資料整理、展覧会の開催、作品集の刊行へと実績を上げました。
その他個人の住宅からも多くの歴史的資料を救出し、美術博物館に運び込まれました。
今回の展覧会のテーマとなるのは、戦前に芦屋に住んだ画家大橋了介の作品と資料の保存です。
大橋了介(1895~1943)は、パリから帰国の後エレナ夫人とともに1935年に芦屋に転居しました。
パリでは、佐伯祐三、荻須高徳、山口長男らと交友しています。
帰国後は、エレナ夫人の献身的な支えのもと画業に専念しますが、画家としての評価は決して高いものではありませんでした。
没後、妹の大橋きよ氏がその作品、資料を大切に保管されてきました。
芦屋市立美術博物館では、90年の開館の時大橋了介作品の寄贈を受け、その後93年には「大橋了介・エレナ展」を開催して、その作品と生涯を紹介しました。
阪神・淡路大震災で市内の大橋きよ氏の住まいは全壊しましたが、美術博物館はそこに残された資料すべてを救出し、整理を行いました。
その中からは、当時の作品、書簡などとともに、28年に佐伯祐三らとともにモランへスケッチ旅行に出かけた時の写真のネガフィルムが発見されています。
救出された大橋了介の油彩作品は、それまでの保存状態が悪くそのままでは残すことができない状態でした。
美術博物館では大橋きよ氏の了解のもとに、これらの作品約120点を保存修復の実習素材として活かすことを考え、東京芸術大学保存修復油画研究室に託しました。
今回の展覧会では、それら救出された書簡、写真資料とともに大学院の実習を経てよみがえった大橋了介作品を紹介します。
展示は下記の通り二部構成として「修復と再生」をテーマに紹介します。