本展では、当館所蔵のジョルジュ・ルオーによる多色刷り版画集『流れる星のサーカス』、『受難』、『悪の華』、及び色刷りに先立って制作されたモノクロ版画集『悪の華』をご紹介いたします。ルオーの版画は初期のような白と黒とで表した深く複雑な階調の世界から、1930年代になると鮮やかな色彩の世界へと変わってゆきます。描かれるものもまた、はげしく罪を糾弾される者からあたたかく愛をもって受け入れられる者へと変化しています。ルオー芸術にとって最も重大な変化は十年以上の隔たりをもって制作された『悪の華』(モノクロ:1926年~1927年、カラー:1936~1938年制作)に如実に見ることができます。人間の弱さや苦悩、孤独を受け止めたルオーは、深い愛へと目覚め、その発露として鮮やかな色彩へと向かっていきました。これらの版画集には、ルオーの人間性および、思想の過程が投影されているのです。版画にみるルオーの「色彩のハーモニー」をお楽しみください。