かつて、ちょいと横丁に入るとそこには寄席がありました。
江戸時代末には既に千住下宿(現南千住)に存在し、大正から昭和初期ともなると、区内で十数軒も確認できます。戦後、東京漫才発祥地といわれる栗友亭が南千住に誕生しますが、昭和30年代も半ばに入ると、寄席は東京中から姿を消していきました。
‘寄席‘という言葉には、何だか懐かしげな響きがあります。少し時代をさかのぼれば、寄席はマチのなかにさりげなくあって、映画館や劇場などよりずっと気軽で身近な場所でした。
マチの人びとにとって、寄席とは一体どんなところで、どのような時間を過ごす場所だったのか。かつてはあたりまえだったけれども、忘れられてしまった場所や経験。そんな寄席をめぐる世界にご招待します。